言葉の意味は徐々に変化していく。その変化が単に間違いに起因する場合もあれば、時代の流れで自然に変化することもある。
前者の有名なところでは、役者不足(役不足)。
本来は、その人の能力に比して仕事(役目)が簡単すぎるという、自分で使うとちょっと傲慢な意味なのに、現代では逆に「自分でその役目が務まるでしょうか」という謙遜の意味で使われていることが多い。これは明らかに勘違いに起因している言葉の用法の変化だ。
後者の有名なところでは、「ら抜き」言葉。
「食べることができる」という意味の「食べられる」が、「食べれる」に変化した。私はこの「ら抜き」言葉には慣れたし、自分でも使う。
一方、まだ慣れないし、めちゃめちゃ違和感があるのが、比較するときの「ほう抜き」言葉。
「それの方が良い」とか「これの方がおいしい」と言うところを、「それのが良い」とか「これのがおいしい」という表現だ。 耳にしたことはあまりないような気がするが、ネットではものすごく良く見かける。
元々はどこかの方言で、ネットを媒介して広まっているのかもしれないが、私にはこの表現の音の響きが汚く感じることもあり、これ以上広まって欲しくないというか、どんどん廃れて欲しいと思っている。
こういう言葉の変化は、日本語以外の言語でも多かれ少なかれあるのだろう。
たとえば英語では、その業界で有名なメーカー名が動詞化するというのがある。
Xerox(ゼロックス)というのは、ゼロックス社のコピー機に限らず、とにかくコピーを取るという意味だし(日本人でもちょっと年配の人は使ったりする)、Fedex(フェデックス)というのは宅配便で物を送るという意味だし、日本語でも英語の真似をして使われるようになったGoogleがある。
また、流行り言葉とすたり言葉もあるようだ。
私がイギリスのロンドンに住んでいた80年代中盤では、レストランに入ってミネラルウォーターを頼む時に、ガス抜きの水は「Evian water」(エビアン・ウォーター)、ガス入りの水は「Perrier water」(ペリエ・ウォーター)と言っていたし、ウェイターも Evian water or Perrier water?などと聞いてきた。
で、実際に注文通り、エビアンなりペリエが出てくることもあるのだが、違うメーカーの水が出てくることもしばしばであった。
この場合、エビアンとペリエは総称として使われただけで、実際にエビアンなりペリエを注文してる・注文されてるという意識は客にもウェイターにもなかったわけだ。
ところが、90年代の後半ぐらいに、ロンドンに行った時にはすでに、ガス抜きの水を「Still water」(スティル・ウォーター)、ガス入りを「Sparkling water」(スパークリング・ウォーター)と呼ぶように変わっていた。それを知らずに Evian waterと注文してしまった私を、ウェイトレスは「いまどきEvian waterって、ぷぷぷ」とか思ってたのかな。
もしかすると、そのうちに検索することを google(ぐぐる)と言うのも廃れたりするんですかね。Bingと呼ぶようになったらイヤだなぁ。
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