ゼニカル (Xenical)とアライ (Alli)(アリーと発音する人もいる)という抗肥満薬は、日本ではいずれも未発売の薬だが、輸入代行業者が販売しているので知ってる人も多いだろう。
どちらも有効成分は一緒だが、処方箋がないと買えない医療用薬がゼニカルで、薬局で買えるバージョンがアライだ。
もっとも有効成分が一緒と言っても入ってる量が違う。ゼニカルには1カプセル当たり有効成分が120mg 入っているのに対し、アライは半分の60mgとなっている。
さて、昨年末に出張でニューヨークに行った際、そのアライのスターターパックを購入した。
何軒か薬局に行ってみたが、棚にはパッケージが並んでおらず「アライはカウンターで購入できます」という貼り紙がしてあるところや、鍵がかかったショーケース内に並んでるなどの管理がされていた。私は鍵がかかっていた店で90錠入りパッケージを2つ購入してみた。1パックが約6,000円と結構な金額。
元々は最近体重がかなる増え気味の妻へのオミヤゲとして買ったのだが、同封されている説明書(分かりやすい小冊子が何冊も同封されている)によると、妻はこの薬の対象となる肥満の範疇には入らないことが判明。一方、私はその範疇にどんぴしゃ入っていたので、私が服用することになった。(服用した結果はまた後で書く)
ところで、上に書いた有効成分はスイスのロシュが創製したオルリスタット (Orlistat) という化合物だ。
この化合物は脂肪の分解酵素であるリパーゼの働きを抑え、体内での脂肪の吸収を妨げ体外へ便と共に排出する効果がある。その効果の裏返しとして、脂肪に溶けることで体内に摂取されるベータカロチンとビタミンEの体内吸収を阻害することになるため、毎晩、就寝時にマルチビタミン剤を飲む必要がある。
食事に含まれる脂肪をある程度カットしてくれるという効果なので、この薬を飲んでいるだけでみるみるうちに痩せるわけではない。そういう意味ではダイエット薬というよりは、ダイエット補助剤と言ったほうがいいのかもしれない。この薬が脂肪をある程度カットしてくれると言っても、油っこい食事を取っていては意味がないので、食事の内容と量を見直し、かつ運動することで効果的に痩せることができる。
ロシュは、医療用医薬品としてゼニカルの名称で世界149ヶ国で発売している一方、イギリスのグラクソスミスクライン (GSK) に一般用薬としての開発販売権を許諾した。GSKはアメリカでアライ (Alli)の名称で一般用薬として発売し、たった半年間で約三百億円もの売上に達するヒット商品となった。また、欧州でも2008年10月に販売承認勧告が出たので発売が近い。
上に書いたように薬局では店員に頼まないと買えないようになっていたが、患者の安全上の理由から誰でも彼でも気軽に買えない様に規制しているのかと最初は思ったが、患者の安全上の理由というよりは、高額商品なので、店が万引きを警戒しているだけのような気がする。
なお、日本では未発売と書いたが、実はロシュの子会社である中外製薬がゼニカルの開発をしていたのだが、大規模な臨床試験が必要となり開発を中止したそうだ。ただ、今日の新聞記事によると、大正製薬がGSKからオルリスタットの開発販売権を得たようだ。
新聞記事によると、大正製薬は医療用医薬品と一般用医薬品のどちらを開発するか未定とのことだが、前述の通り、GSKはロシュから一般用薬の開発販売権しか得ていないように思われるのだが、どういうことだろう。もしかすると、ロシュがゼニカルの開発販売を断念した国においては、医療用薬も開発販売できる権利をGSKに許諾しており、日本市場がそれに該当したのかもしれない。
いずれにせよ、日本で発売されるのはまだ数年先のことになる。また、日本では欧米で発売されている薬の半分の量の有効成分で発売されることがよくあるので、日本で発売されるものは 30mg になるかもね。
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