東京マラソンの不手際その1

2012年2月27日月曜日

オリンピック スポーツ

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川内選手が14位に終わってしまった原因の一つが、3回もスペシャルドリンクを取れなかったことによる身体的および精神的ダメージによることは明らかであろう。もちろんあまりに人気が出すぎて重圧もあったろうし、TV出演や取材などで予定通りの練習ができなかったなどの理由もあろうが、当日のスペシャルドリンクの影響は大きいはずだ。

川内選手は、自分のドリンクを見つけられなかったことは自分の責任であるように言っていたが、それは違う。これは明らかに東京マラソンの運営側の責任である。

今回の東京マラソンのスペシャルドリンクの置き場所の写真を見てみよう。これとかこれとかこれとか。ドリンクがごちゃごちゃと密集して置いてあって、どれが自分のものか分からない。

次に、東京マラソンより1万人も多い4万人超のランナーが走るニューヨークシティマラソンの写真はこれ。同じく4万人を超えるロンドンマラソンの場合はこれとかこれとか。

どちらの大会も、ドリンク同士の距離を空けて置いてあることが分かる。距離があいているから、日本みたいにドリンクの上に飾りをつけたり、取っ手を付けたりしなくても見分けがつくようで、誰もつけてないことも分かる。特にニューヨークの場合、テーブルの両側から取れるようになっていて取り易そうだ。

皆さんはマラソンのトップランナーが平均時速20kmで走っていることをご存知だろうか。

時速20kmと言われても、どれぐらいの速度かピンと来ないだろうが、変速ギアがついてないママチャリでは、普通の人は平地ではなかなか出せない速度だ。脚力の強い人が一生懸命漕いだ速度が20kmいくかいかないか。そんな速いスピードで彼らは走っているのだ。

 では、ママチャリに乗って、下り坂を普段よりも速い速度で下っているところをイメージをしてもらおう。イメージできただろうか。 次に、自分の周りに10台の自転車がいるところをイメージしてもらおう。

非日常的なイメージなので想像しにくいかもしれないが、その速度で走りつつ、他の自転車にぶつからないようにその集団から抜け出しつつ、会議テーブルにごちゃごちゃと置かれている自分のドリンクを見つけてサッと取るというのが、昨日の川内がやらなければいけなかったことなのだ。どう考えても無理である。

なんでそんなことになったかといえば、東京マラソンでは、スペシャルドリンクを置ける人はなんと100人もいるからだ。(エリートランナーの募集要項)(pdf)

100人全員がスペシャルドリンクを置くとは限らないが、100本近くのドリンクボトルがあるからこそ、上の写真のように机にぎっしり状態となってしまうのだ。

ニューヨークシティマラソンの場合、優勝を狙えるエリートランナーと2時間35分以内で走れるサブエリートランナーに分かれている。サブエリートは日本同様100人いるのだが、スタート地点で一般ランナーから区別されて有利などの特典はあるものの、スペシャルドリンクを置ける特典はないようだ。もちろんそれはそうだ。上のリンクの写真のようにすかすかにドリンクを置くためには、ドリンクの本数を制限しなくてはいけない。東京マラソンでは、大盤振る舞いしすぎているのだ。

時速20kmということは、秒速5.6mである。 1秒遅れただけでも6m近く置いていかれてしまうので、スピードを緩めることはできない。トップスピードのままドリンクを取らなくてはいけないのだ。 ましてや立ち止まって探すなんて論外。たった3秒でも約17m遅れてしまうのだから。

しかも、一旦、立ち止まるとフルスピードに戻すまで時間がかかる。それに、ランナーなら分かるが、一旦、立ち止まると筋肉の疲れが急にどっと来るし、元のリズムと速度に戻すのが大変なのだ。そもそも17mの差を追いつくのも大変だ。余裕のあるジョギングペースで走っているのなら簡単に追いつけるが、限界に近いスピードで走っているのだから、そう容易ではない。

ただ、日本ではスペシャルドリンクを取りにくい状況は、東京マラソンに限らず、ほかのマラソン大会でも似たりよったりなのだ。日本のマラソン大会の運営者側は、上に書いたようなことをちっとも分かっていないのだ。要するに素人集団が運営しているのではないだろうか。

運営者の決定権を持っていたり、発言権を持っている人に、どんなレベルであれフルマラソンを走ったことがある人がいないのではないだろうか。あるいはいるにしても、昔ながらの根性論を振りかざす、お年寄りなのではないだろうか。「気合があれば、ドリンクは取れる!」のような。そもそも日本では給水の重要性が軽視されがちで、箱根駅伝で給水可となったのは、実に1997年になってからだ。いかに陸上競技のお偉いさんが根性論を振りかざしているかが分かる。

話題になったのは川内だけだが、第1集団、第2集団の選手のほかの選手にもスペシャルドリンクを取れなかった人はいると思う。東京マラソンの運営側は今回のことを真剣に受け止めてぜひ改善して欲しい。(2011/3/6追記 3月4日に開催されたびわ湖毎日マラソン有力候補だった堀端宏行選手もやはり給水に失敗した。もちろんこの大会もやはりごちゃごちゃとドリンクが置かれていた)

今後、東京マラソンを海外の一流大会並みの運営にするためには、話題集めだけでなく、こういうランナーのための運営をきっちりやっていく必要がある。そのためには、ニューヨークシティマラソンやロンドンマラソンを視察に行くべきだ。

第1回東京マラソンを開催するに当たっては、石原都知事ご一行様がニューヨークシティマラソンを視察したらしいが、そんな上の人が物見遊山気分で行くのはまったく無意味。運営者側が見学ではなく、研修のような意識で色々なことを学んでこなくてはいけないと思う。



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