誰しも人工臓器を入れて寿命を延ばすのが当たり前になった時代。高価な人工臓器のローンを支払えなくなった客から、人工臓器を強制回収する荒っぽい仕事を職業とする取り立て屋は、通称レポマンと呼ばれる。一流のレポマンである主人公が、自らの半生を綴るという形で進行する本作は、映画化された「マッチスティック・メン」の作者、エリック・ガルシアの新作だ。
本作「レポメン」も、フォレスト・ウィッテカーとジュード・ロウ主演で映画化され、2010年4月にアメリカで封切られるが、確かに映画にすれば面白い題材であり、日本での公開が待ち遠しい。だが、小説の出来としてはどうも今ひとつ。
読み終わるのに1ヵ月ちょいかかっってしまった。1日数ページづつの牛歩進行。決してつまらなくはないのだが、早く次のページを読みたい!という推進力には欠ける。いわゆる英語で言うところのPage-turner(読み出したら止められない本)ではないので、諦めが早い人は途中で読むのを止めてしまうだろう。
主人公の回想録となっているため、時代と場所がぽんぽん飛ぶところがイヤだという人もいるかもしれないが、よく練られている上手い構成なのでその点は気にならなかった。だが、未来で使われる固有名詞や単語が何の説明もなく、ためらいなく使われているところは、最近観た(ようやく!)スタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」を彷彿させる。最後まで読むとなんとなくどういう意味なのか想像がつくようになってるが、やはりこれはどうも違和感があるし、とっつきが悪い一つの原因になっている。
もっとも、そんなことは些細な点であり、残り数十ページになるまで、大した事件が起きるわけでもなく、レポメンになったいきさつや過去4回の離婚話が語られるだけという進行の遅さが一番の原因であること明らか。短編小説にしたら小気味よい作品になったことだろう。後書きに、元々は短編小説でそれを長編に書き直したことが書かれていた。短編のままにしておけば良かったのに....。
エリック・ガルシアは、小型化した恐竜共が人間の皮をかぶって現代社会で隠れて生活しており、ヴェロキラプトルが私立探偵となって活躍するという奇想天外な発想の鉤爪シリーズ「さらば、愛しき鉤爪」、「鉤爪プレイバック」、「鉤爪の収穫」がやはりなんと言っても面白い。鉤爪シリーズの面白さを期待して、本作を読むと大いに失望させられること間違いなし。
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